2021/03/23 07:24
雪崩の話である。またぎ・伐採人・炭焼きは寒中に豆を炒ってはいけない。し、くるみを割ってもいけない。音や振動で雪崩が起こるからだという。雪庇を歩くなと教わるがその下にはクマがいることがあった。雪崩が落ちる時間は早朝か夕方だった。落ちたところにはゼンマイやワラビなどの山菜が早く出た。雪崩にも禁伐伝承がある。
山地崖落のことをジャヌケ(蛇抜け)と呼ぶ例がある。遠望すると緑の山の斜面に長い帯を垂らしたように赤土や黄土を露呈させている崖地落がある。それはまさに、大蛇が木々をなぎ倒して通り抜けた跡地を思わせる。人々に残酷な被害を与える山地崩落、その理不尽な現象を大蛇の仕業に象徴させて己を納得させてきたのである。
朝日山地では1000mを超す高さまで広葉樹林となっている。そのうち標高600mまでが栗帯でケヤキ・ミズナラ・クリ・コナラ・ウワミズザクラと、スギ・カラマツの人工林になっている。600~1400mまでがブナ帯となっている。
ブナ帯では高木にブナ・ミズナラがあり、亜高木にハウチワカエデ・アズキナシ・ミズキがある。低木には、リヨウブ・タムシバ・オオバクロモジ・オオバスノキがあり、草木にはハイイヌツゲ・ツルシキミ・ヒメモチがある。
参考文献 秋道智彌(2012年)『日本の環境思想の基層』岩波書店
日本の自然暦と環境観
山腹に現れる積雪の模様を示す「雪形」を農事暦であると同時に山岳美でもあると形容したのは山岳写真家の田淵行男である。
自然暦とは、自然の移り変わりを目安とするもので、一年を通算することも無く、均等な一ヶ月を用いる訳でもない。また、必ずしも日数を数えず、年始はおおよそ決まっているが確定せず、何月何日という認識をもたない場合がある。
雪形は四月から五月にかけての頃、主に中部、北陸、東北の各地方、ならびに北海道にかけて農業や漁業の目安として使われてきた。全国に311もあるとされているが、130はすでに不明となっている。有名なところでは、佐渡の金北山の種まきザル、福島県の種まきウサギ、北海道のヒラメ形の残雪(アイヌの漁業暦でヒラメのとれどき)などをあげられる。
植物もまた季節の推移を知る手がかりとなっていた。山木蓮が咲くと籾蒔き、散ると田植えという伝承が石見地方にあった。和歌山ではブリ漁は甘藷(さつまいも)の芽が二三寸伸びた頃と頃とされてきた。
動物の出現は農事とも関係が深い。ウグイスの声を聞いて苗代に種を蒔く、カッコウが鳴くから大豆を巻かねばならない。
アマガエルと彼岸花はそれぞれ梅雨や秋の彼岸と結びつき、田打ち桜と称して水田の準備を始める風習もあった。