nokatachi

2021/11/09 21:11


クロモジを削ったら良い香りがした。近くの山から採ってきたクロモジだ。
太い枝を真っ直ぐに残す削り方ではなく、そのままでも箸として使えそうな枝ぶりを選んで、身体の延長としての道具を試みる。
手に馴染む持ち方を探して、食材を摘む一点だけを調整する。
他の表皮を削るかはその人次第だ。
私は軽く削ってみた。枝ぶりの形を残しつつ気持ちの良いスベスベの持ち心地だ。

参照文献:斎藤たま【箸の民俗誌】論創社 2010

茶請けに添えられたクロモジの箸。長さは手頃、やや先細りに全体をすっきりと削り、てっぺんに一部皮付きのまま残してある。きっちり短冊に残してある。(熊本県)


クロモジの方言

・トリコシバ(秋田県)

・フクギ(鳥取県)

・トリキ(山形県)


◽️山形県の小国町では、「トリキの箸は虫歯にならぬ」と言って使っている。

◽️岩手県の海岸沿いでは、薬効のほどが切り傷などにこの皮を煎じた汁をつける。

◽️岐阜県の徳山村では、腹痛が山で起こった時はクロモジの皮を削って飲むことがあった。

◽️熊本県の五木村では、クロモジの箸が正月用に拵えたらその後年中使われている。

  さらに、神社に詣ったらそこではクロモジの杖を売っていて、この杖から箸を作った。

  近所の人が「分けてくれさい」と言ってきたりする。

  匂いの強いもの、言ってみれば臭いものもモノ除けの一条件なのである。

◽️鳥取県の赤崎町では、正月にフクジルと呼ぶものを飲んだ。フクギの枝先を折ったものを幾つ 

  か水に入れて煮、醤油で味をつけたものを三が日のうち一回飲んだ。汁にはフクギのほか何も 

  入れず、椀にも枝は盛り付けない。これも腹中のお祓いなのだ。




引用文献  野本寛一『食の民俗事典』(柊風舎 2011年)

山行きの弁当には箸を持参せず、あたりに自生する萱を折って箸の代わりにし、食べ終わると屋外では必ず折って捨てた。モグラ除け蛇除けや田の神に添える箸を田畑に立てる風習もある。