nokatachi

2024/09/04 12:05


『梅干しのレシピ』 


畑の赤紫蘇は市場に梅が出始めてから三週間後ぐらいに収穫できる。それまで梅を塩漬けしておく。その間に赤紫蘇は太陽の光をたくさん吸って鮮やかになる。だから梅干しに使う赤紫蘇は鮮やかな太陽に近い上部の部分になる。その太陽の鮮やかさを保つために赤紫蘇を塩で揉んで灰汁抜きをする。たくさんする。揉んで捨ててを5回繰り返す。それで保たれた赤を梅に移す。容器に入れた梅と赤紫蘇を毎日天地返しする。そうして梅が赤に変わっていく。鮮やかになっていく。梅に赤が移ったら太陽の光をもう一度あてて終わり。


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農家と気候の間にある料理。梅干しに夏の太陽を付与して食べるヒトの術を料理と考えた記録。

美味しい梅が食べたいのなら、白梅で十分美味しく食べられる。むしろそちらの方が梅の香りや果実感を感じられる。しかし、赤紫蘇を加えさらに干すという手間までかける梅干し作りには、保存を長引かせるという食生活における利便性が機能としてあるのだと思っていたが、それは、その場所で作られた物がその環境構造から移動することで、その物が持つ言葉の意味が変わってしまったのではないかと思う。なので、その変化した言葉を剥がしたなかには、ヒトがその環境を生き抜く上で大切な何かが隠れているのではないか。