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2023/10/03 17:52



渡部忠世 深澤小百合

『もち』 (法政大学出版局 1998年)



東南アジア一般における炊飯用具の変遷の可能性がある。粗雑な土器の段階では粳米を炊くより、持ち込めを蒸すことのほうが遥かに好都合であったのではないか。



タイ族では、熟鮓にもおこわを使う。魚の腹部を開き、そこにおこわ、岩塩、唐辛子、生姜を入れ、それとおこわを交互に壺の中に重ねて、壺の口の溝に水をはって蓋をかぶせ、発酵を待つというものである。


トン族の宴会料理には、粥に使う酸湯であるが、これはモチ米のとぎ汁を位割の側の容器にためてその熱で発酵させた液である。


チワン族はおこわを、黒はカエデの葉、紅は紅花、黄はクチナシの果実か生姜でモチ米を染めるという。


韓国では、お正月のハレ食としての雑煮餅を食べて年をこして、年を取るということは重要な意味が含まれていると思われます。年を取ることを「歳を食べる」と言う。



竹筒飯はカオ・ラームと言う。アジアの国々ではほぼ同じような製法と形態であるが、ここでも一節分を切った竹筒に水に漬けた餅米とココナツミルクを入れて、バナナの葉で蓋をして焚き火の端に立てる。ちまきは餅米にココナツミルクを加えて炒めるか煮たものに、バナナをのせてバナナの葉で包んで蒸すことが多い。



昭和25年頃までは旧正月を前に、餅米の餅、粟餅、きび餅、もろこし餅など、いずれも長さが30cmもある「ナマコ」と呼ぶ餅をつくり、水餅にして主に夏の農繁期に使い、10月まで保存したという。なかでもきび餅は水餅にしても形がくずれず、味も変化しなかったらしい。



餅の伝統的な製法であるが、まず精白したもち米をよく洗い、全日から十分に水に漬けて給水させる。翌日蒸籠に入れて、30~40分間蒸すが、途中に一、二回打ち水をする。そして蒸し米が冷めないうちに臼と杵を使って一気に餅にする。こうして作られた餅は色が白くキメが細かく、餅特有の香味があり、腰も強く、よく粘ると言われている。

エゴマを使ったじゅうね餅はゴマとクルミの味が入り混じった最も美味しい餅と言われている。



ちまきはその期限が中国の故事とされるほど歴史は古い。日本では香気の強いショウブやヨモギを軒端にさして災厄や邪気を祓い、同じ意味からちまきも作られたのであろう。

ちまきが文献に現れるのは平安時代である。

『本朝食鑑』には4種類ほどのちまきが載っており、その一つは餅をまこまで包んでおり、蒸したもち米を餅にして、長さ4・5寸、頭と尾を細く尖らせ、中程を円肥にする。あるいはクチナシの汁で染めるものもあるが、いずれもマコモの葉で包んでいる。



東北から日本海側にある笹巻き(秋田・山形)、三角ちまき(新潟)などは笹の葉でもち米を正三角形に包み、10個を1連にして煮たちまきで、きな粉をつけて食べる。ところによってはひし巻き(会津)、三角巻き(山形)ともいう。笹の葉を取ると握り飯と変わらず、柳田國男はこの三角ちまきが心臓の形を模した「ミタマの飯」ではないかと述べている。

江戸時代から東北地方一帯で作られ、山形では月山、羽黒山、出羽三山参りの携帯食ともなっていた。山形の竹の子巻きはその名の通り40枚もの笹の葉を竹の子のように巻きちまきで、子供の七歳の正月に作る。山形には藁灰の灰汁で煮る笹巻きもあり、それをあく巻きとも言う。これらはいずれももち米を使っている。